
2026年7月28日に発生した熊本地震により被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震を受け、国や関係機関では、被災した中小企業・小規模事業者を対象として、資金繰り支援、信用保証、既存借入金の返済猶予、雇用関係の支援、税金の申告・納付に関する措置などを実施しています。
また、熊本県内に本社を置く企業だけでなく、福岡県に本社があり熊本県内に支店・店舗・工場などを持つ企業や、熊本県内の取引先の被災によって間接的な影響を受けた福岡の事業者についても、利用できる支援制度があります。
2026年8月7日現在で公表されている主な支援制度概要を記載しています。なお、福岡所在の事業者の視点も交えて整理します。
この記事でとくにお伝えしたいこと(注意点)
- 支援制度には「事業所の所在地」で判断するものと「納税地」で判断するものがあり、判定基準が異なります
- そのため、福岡本社・熊本支店の法人は融資は使えるが国税の期限は自動延長されない、という組み合わせが起こり得ます
- 建物や設備に直接被害がなくても、取引先の被災による間接被害で使える制度があります
災害救助法が適用されている地域(10市10町1村)
令和8年熊本地震について、熊本県内の10市10町1村(21市町村)に災害救助法が適用されています。
市(10市)
熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市
町村(10町1村)
下益城郡美里町、菊池郡大津町、菊池郡菊陽町、阿蘇郡西原村、上益城郡御船町、上益城郡嘉島町、上益城郡益城町、上益城郡甲佐町、八代郡氷川町、葦北郡芦北町、葦北郡津奈木町
これらの地域を中心として、被災した中小企業・小規模事業者向けの金融支援等が実施されています。
激甚災害・特定非常災害の指定について
2026年8月3日、政府は今回の地震を「激甚災害」に指定する方針および「特定非常災害」に指定する方針を表明しました。翌8月4日には、復旧・復興の支援として今年度予算の予備費から総額242億円を支出することが閣議決定されています。
内閣府も8月3日付で特定非常災害への指定見込みを公表し、指定政令の制定に向けた手続を進めるとしています。
特定非常災害に指定されると、行政上の権利利益に係る満了日の延長や、期限内に履行できなかった義務に係る免責などの措置が適用されるほか、税務上も雑損控除の繰越期間が3年から5年に延長されるなどの効果があります。
※ 2026年8月7日時点では、いずれも「指定見込み・指定方針」の段階です。政令の公布内容を必ずご確認ください。
1.中小企業向け「特別相談窓口」の設置
経済産業省は、被災した中小企業・小規模事業者の相談に対応するため、熊本県内を中心に特別相談窓口を設置しています。
主な相談先としては、次の機関があります。
- 日本政策金融公庫
- 商工組合中央金庫
- 熊本県信用保証協会
- 商工会議所・商工会連合会
- 熊本県中小企業団体中央会
- 熊本県よろず支援拠点
- 全国商店街振興組合連合会
- 中小企業基盤整備機構 九州本部
- 九州経済産業局
「建物や設備が壊れた」「営業を休止して売上が減少した」「仕入代金や給与の支払いに必要な資金が不足する」といった場合には、できるだけ早めに相談することをおすすめします。
福岡から相談できる主な窓口
| 窓口 | 連絡先 |
|---|---|
| 中小企業基盤整備機構 九州本部 企業支援部 企業支援課 | TEL 092-263-0300 〒812-0024 福岡県福岡市博多区綱場町2番1号 博多FDビジネスセンター3階 |
| 日本政策金融公庫 熊本支店 | 国民生活事業 0570-097290(ナビダイヤル) 中小企業事業 096-352-9155 農林水産事業 096-353-3104 |
| 日本政策金融公庫 八代支店 | 国民生活事業 0570-098446(ナビダイヤル) |
受付時間は平日9時~17時(2026年7月29日現在)。中小機構はオンライン経営相談「E-SODAN」にも特別窓口を設置しています。
2.日本政策金融公庫の「災害貸付」「災害復旧貸付」
日本政策金融公庫では、令和8年熊本地震で被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象として、災害関連の融資制度を実施しています。事業区分によって適用される制度と条件が異なります。
| 国民生活事業 | 中小企業事業 | |
|---|---|---|
| 適用できる制度 | 災害貸付 | 災害復旧貸付 |
| 資金の使いみち | 災害復旧のために必要な運転資金および設備資金 | |
| 融資限度額 | 3,000万円 ※各融資制度の融資限度額に上乗せされる金額 | 1億5,000万円(別枠) |
| 融資期間 (うち据置期間) | 10年以内(2年以内) ※一般貸付を適用した場合 | 運転資金 10年以内(2年以内) 設備資金 15年以内(2年以内) |
店舗・工場・機械設備などの復旧費用だけでなく、事業再開までに必要となる運転資金についても相談できます。すでに日本政策金融公庫から融資を受けている場合には、既存借入金の返済条件変更等もあわせて相談できます。
なお、農林漁業者向けには「農林漁業施設資金(災害復旧施設)」「農林漁業セーフティネット資金(災害)」が、住居に被害を受けた方には「国の教育ローン」の災害特例措置(年収・所得制限の一部緩和等)が用意されています。
3.セーフティネット保証4号
地震の影響によって売上が減少した中小企業については、セーフティネット保証4号による資金調達支援を利用できる可能性があります。
セーフティネット保証4号とは、自然災害などによって経営の安定に支障が生じている中小企業者に対し、信用保証協会が通常の保証枠とは別枠で原則100%保証する制度です。別枠として、無担保8,000万円・普通2億円の保証限度額が設けられています。
※ 100%保証は「返済が免除される」という意味ではありません。融資を受けるには金融機関および信用保証協会の審査があります。
主な要件
- 原則として、最近1か月の売上高等が前年同月比で20%以上減少していること
- その後2か月を含む3か月間の売上高等も、前年同期比で20%以上減少する見込みであること
利用する場合には、事業所所在地の市町村長から認定を受けたうえで、金融機関または信用保証協会へ融資を申し込みます。
建物や設備に直接被害を受けていなくても、地震による休業、来店客の減少、取引停止などによって売上が大きく減少した場合には、対象となる可能性があります。
指定地域の官報告示について
今回の地震に係るセーフティネット保証4号の地域指定は、経済産業省の発表時点で「近日中に官報にて告示予定」とされ、告示に先行して信用保証協会での事前相談が開始されています。告示を待たずに相談を始めて差し支えありません。
4.既存借入金の返済猶予・条件変更
新たな借入だけでなく、すでに借りている借入金についても支援措置があります。
経済産業省は、熊本県の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫および信用保証協会に対し、被災した中小企業・小規模事業者の実情に応じて次の対応をとるよう要請しています。
- 返済猶予・返済期間の延長などの既往債務の条件変更
- 貸出手続きの迅速化
- 担保徴求の弾力化
地震の影響によって一時的に売上が減少し、資金繰りが厳しくなることが予想される場合には、返済が遅れる前に金融機関へ相談することが重要です。
「り災証明書がまだ出ない」場合でも相談できます
金融庁および財務局は、被災地の金融機関に対して金融上の措置を要請しています。そのなかには、り災証明書を求めている手続きであっても、市町村における交付状況等を勘案し、現況の写真の提出など他の手段による被災状況の確認や、り災証明書の後日提出を認めるなど、被災者の便宜を考慮した取扱いとすることが含まれています。
あわせて、融資審査における提出書類の必要最小限化、融資の迅速化、既存融資に係る返済猶予等の貸付条件の変更についても要請されています。
「証明書が発行されるまで動けない」と考える必要はありません。被災状況がわかる写真等を手元に用意したうえで、まず相談してください。
5.熊本に事業所・取引先を持つ福岡の事業者も対象になる可能性があります
今回の熊本地震については、熊本県に本社を置く企業だけが支援対象になるわけではありません。
福岡県に本社があり熊本県内に支店・営業所・店舗・工場などを持つ企業や、熊本県内の取引先が被災したことによって売上減少などの影響を受けた福岡の企業についても、利用できる制度があります。
「本社が福岡県だから対象外」と判断せず、自社の被害状況や取引状況に応じて確認しておくことが重要です。
福岡本社で熊本に事業所がある場合
例えば、次のようなケースです。
- 本社は福岡市だが、熊本市に営業所がある
- 福岡県内に本店登記があるが、八代市に店舗や工場がある
- 福岡の会社が熊本県内に倉庫や物流拠点を持っている
- 熊本県内の支店や店舗が休業を余儀なくされた
熊本県内の対象地域に実態のある事業所を持ち、その事業所が地震の影響を受けている場合には、福岡県に本社がある法人でも、災害関連融資や信用保証制度等の対象となる可能性があります。
特にセーフティネット保証制度では、法人の登記上の本店所在地だけではなく、実際に事業を行っている事業所の所在地が重要となる場合があります。
福岡本社・熊本支店という法人については、熊本側の事業所所在地、事業実態、売上減少の状況等を整理し、所在地の市町村や信用保証協会、取引金融機関へ相談することをおすすめします。
熊本の取引先が被災した福岡企業も「間接被害」の対象となる場合があります
特に確認しておきたいのが、自社の建物や設備には直接被害がなくても、熊本の販売先や仕入先が被災したケースです。
日本政策金融公庫の災害関連融資では、災害によって直接被害を受けた事業者だけでなく、直接被害を受けた事業者との取引に起因して、売上減少や売掛金の固定化などの間接的な被害を受けた事業者についても対象となる場合があります。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 熊本の主要販売先が被災し、商品の納入が停止した
- 熊本の得意先が営業停止となり、自社の売上が減少した
- 被災した取引先から売掛金を回収できなくなった
- 熊本の仕入先や工場が被災し、商品や原材料を仕入れられなくなった
- 熊本からの部品供給が止まり、自社の製造や販売にも影響が出た
- 熊本県内で予定していた受注やイベント等がキャンセルされた
このような場合には、自社所在地が福岡県であっても、日本政策金融公庫の災害関連融資などについて相談する余地があります。
「取引先が熊本にある」だけでセーフティネット保証4号を利用できるとは限りません
一方、注意が必要なのが、セーフティネット保証4号と日本政策金融公庫の災害関連融資では対象範囲が異なることです。
セーフティネット保証4号は、原則として、国が指定した地域内に事業所を有し、災害によって経営の安定に支障が生じている中小企業者が対象となります。
そのため、「自社の事業所はすべて福岡県内にあり、熊本県には取引先があるだけ」という場合には、熊本地震を理由としたセーフティネット保証4号をそのまま利用できるとは限りません。
これに対し、日本政策金融公庫の災害関連融資では、被災した取引先との取引に起因する売上減少、売掛金の回収遅延等の間接被害についても相談できる場合があります。
福岡企業のケース別・検討したい制度
| 自社の状況 | 検討したい主な支援 |
|---|---|
| 熊本の事業所・店舗・工場等が直接被災した | 災害復旧貸付・災害貸付、セーフティネット保証4号、既存借入の条件変更等 |
| 熊本に事業所があり、地震の影響で売上が減少した | セーフティネット保証4号、災害貸付等 |
| 熊本に事業所はないが、被災した取引先の影響で売上が減少した | 日本政策金融公庫の災害貸付など |
| 熊本の取引先から売掛金を回収できなくなった | 災害貸付、金融機関への資金繰り相談 |
| 熊本の仕入先が被災し、商品・原材料の調達が停止した | 災害貸付その他の資金繰り支援 |
※ 実際の適用可否は、事業所所在地、被害状況、取引関係、売上減少状況等によって異なります。
福岡の企業が準備しておきたい資料
熊本地震による間接的な影響について金融機関等へ相談する場合には、地震と自社の売上減少・資金繰り悪化との関係を説明できる資料を準備しておくことが重要です。
- 熊本の事業所所在地が分かる資料
- 被災した店舗・設備等の写真
- り災証明書等
- 熊本の取引先との契約書、請求書、納品書
- 地震前後の月次売上高
- 取引先別の売上高一覧
- 被災した取引先への売掛金残高
- 注文取消しや取引停止が分かるメール
- 仕入先からの供給停止通知
- 今後3~6か月程度の資金繰り表
特に間接被害の場合には、「どの熊本の取引先が被災し、その結果、自社にいくらの売上減少や資金不足が生じるのか」を説明できるようにしておくと、金融機関への相談を進めやすくなります。
直接被害がなくても早めの資金繰り確認を
災害の影響は、建物や設備の損壊だけではありません。
取引先の休業、仕入れ停止、物流の混乱、受注キャンセル、売掛金の回収遅延などによって、地震発生から数週間~数か月後に資金繰りへの影響が表面化することもあります。
熊本に事業所や重要な取引先を持つ福岡の中小企業・小規模事業者は、直接被害がなかった場合でも、今後の売上・入金・支払予定を確認し、必要に応じて早めに日本政策金融公庫、取引金融機関、信用保証協会、税理士等へ相談することをおすすめします。
6.小規模企業共済の「災害時貸付」
小規模企業共済に加入している個人事業主や会社役員等については、災害時貸付を利用できる場合があります。
災害救助法が適用された地域内で被害を受けた小規模企業共済の契約者を対象に、中小企業基盤整備機構が原則として即日、低利で融資を行う制度です。
すでに小規模企業共済へ加入している経営者の方は、対象となるか確認しておくとよいでしょう。手続きの詳細は中小機構九州本部(福岡市博多区/TEL 092-263-0300)へお問い合わせください。
7.雇用調整助成金など雇用・労働関係の支援
地震によって事業所を休業せざるを得なくなった場合などには、雇用調整助成金をはじめとする雇用関係助成金を利用できる可能性があります。活用にあたってはハローワークへご相談ください。
従業員側の特例措置
災害救助法の適用地域にある事業所が地震により直接被害を受け、休業したために一時的に離職した労働者について、元の事業主へ再雇用される予定である場合には、要件を満たすと雇用保険の基本手当を受けられる可能性があります。
また、指定された失業認定日にハローワークへ行けない場合の認定日変更や、避難先を管轄するハローワークでの手続きも案内されています。あわせて、未払賃金立替払制度の申請手続きも簡略化されています。
労働保険料等の納付猶予
災害によって財産に相当の損失を受け、労働保険料等を一時に納付することが困難となった場合には、労働保険料等の納付猶予を受けられる場合があります。一定の要件を満たせば、延滞金の全部または一部の免除、財産の差押えの猶予、換価の猶予などが認められる場合があります。
従業員を一時的に休業させる場合には、自己判断で対応するのではなく、ハローワークや熊本労働局、社会保険労務士等への相談をおすすめします。
8.国税の申告・納付期限の延長【福岡本社の法人は要注意】
国税庁は7月29日付で「令和8年熊本地震により被害を受けられた皆様へ(災害関連情報)」を公表し、被害を受けた場合の申告・納税等の手続をまとめて案内しています。(具体的な情報はこちらを参照)
地域指定による自動延長(八代市・宇土市・宇城市・氷川町)
国税庁は2026年8月4日、熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町に納税地のある方(法人を含む)について、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出およびその他の書類の提出並びに納付等の期限を延長する(地域指定)ことを公表しました。この措置は近日中に官報で告示される予定です。
地域指定の対象となる方は、特別な申請をしなくても期限が延長されます。
【重要】「災害救助法の適用地域」と「国税の地域指定」は範囲が異なります
中小企業向けの金融支援は10市10町1村(21市町村)が対象ですが、国税の期限延長の地域指定は4市町のみです。混同しないようご注意ください。
福岡本社・熊本支店の法人は自動延長されません
ここが最も誤解が多く、かつ実害が大きい論点です。
地域指定による期限延長は、指定地域内に「納税地」のある納税者に限られます。指定地域内に事業所や工場、店舗を有していても、その納税地が指定地域外にある場合、申告・納付等の期限は延長されません。
法人税の納税地は原則として本店所在地です。したがって、本店が福岡県内にあり、熊本県内に営業所や工場を持つ法人は、熊本の事業所が被災して帳簿や証憑が失われ、決算・申告作業が事実上進められない状況であっても、何もしなければ期限は到来してしまいます。
| 制度 | 判定の基準 |
|---|---|
| セーフティネット保証4号 | 事業所の所在地(指定地域内に事業所があるか) |
| 国税の期限延長(地域指定) | 納税地(法人は原則として本店所在地) |
同じ「福岡本社・熊本支店」の法人でも、保証は使えるが国税の期限は自動延長されない、という組み合わせが生じます。
地域指定の対象外でも「個別指定」による延長が可能です
地域指定がない場合でも、災害その他やむを得ない理由によって期限までに申告・納付ができないときは、所轄税務署長に申請することにより、その理由がやんだ日から2か月以内に限り期限の延長を受けられます(個別指定)。
当初の期限が経過した後であっても、状況が落ち着き次第、申告や納付等と同時に申請を行うことで延長が認められます。慌てる必要はありませんが、「申請しなければ延長されない」という点だけは押さえておいてください。
対象となり得る手続きには、法人税の確定申告、消費税の申告、所得税の確定申告、源泉所得税の納付、各種届出書の提出などがあります。
関税についての取扱い
関税についても、財務大臣が指定する地域(熊本県八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町)における被災者は、令和8年7月28日以後に到来する申請等の期限が自動的に延長されます。このほかの地域に住所等を有する方でも、交通途絶等により申請等が困難な場合には期限の延長が認められます。輸出入取引のある事業者はあわせてご確認ください。
9.国税の納税猶予
地震によって財産に大きな損害を受けた場合や、一時的に国税を納付することが困難になった場合には、納税の猶予を受けられる可能性があります。
災害により全積極財産のおおむね20%以上の損失を受けた方は、一定の国税について納税の猶予を受けられる場合があります(災害がやんだ日から2か月以内に申請)。
また、災害等により一時に納付できないと認められる場合の猶予制度もあり、両方を合わせて最長3年間の猶予が認められることがあります。
あわせて、予定納税の減額申請や、源泉所得税の徴収猶予・還付といった措置も設けられています。
資金繰りが厳しい場合には、新たな融資を受けることだけでなく、税金の納付時期を調整できないかという視点も重要です。
10.被災した建物・設備などの法人税・消費税上の取扱い
災害損失の取扱い
地震によって会社の店舗、事務所、商品、機械設備などに損害が発生した場合には、法人税上もさまざまな取扱いがあります。
- 被災によって商品や原材料が滅失・損壊した場合の損失
- 店舗、事務所、機械設備等が滅失・損壊した場合の損失
- 損壊した建物等の取壊し・除去費用
- 土砂などの障害物の除去費用
これらについては、一定の条件のもと損金として処理することができます。
修繕費と資本的支出の区分
被災した固定資産について、被災前の状態に戻すための費用は原則として修繕費として取り扱われます。
通常であれば「資本的支出」に該当するか「修繕費」に該当するか判断が難しい工事であっても、災害復旧については特別な取扱いが認められる場合があります。
そのため、工事前後の写真、修理見積書、工事内容が分かる資料、請求書、被害状況の記録などを保存しておくことが重要です。
災害損失欠損金の繰戻し還付
災害により生じた損失について、欠損金の繰戻しによる還付を受けられる場合があります。前期に納付した法人税の還付を受けられる可能性があり、資金繰り面での効果が大きい制度です。
個人事業主については、雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除のいずれか有利な方を選択できます。雑損控除は所得控除で、控除しきれない分は翌年以後3年間(特定非常災害に指定された場合は5年間)繰り越せます。災害減免法は、住宅・家財の損害が時価の2分の1以上で、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の場合に、所得税が軽減または免除される制度です。
消費税の届出の特例
見落とされやすいのが消費税です。災害等により被害を受けた事業者については、簡易課税制度選択届出書・簡易課税制度選択不適用届出書の提出に関する特例承認が設けられています。
復旧のために多額の設備投資を行う場合、簡易課税から原則課税へ切り替えることで還付を受けられるケースがあります。逆に、事務処理体制が失われて原則課税での集計が困難な場合には、簡易課税を選択したいという場面もあります。
通常は事業年度開始前の届出が必要ですが、災害の場合には事後的な選択・変更が認められる余地があります。設備投資の実行前に必ずご相談ください。
11.被災した事業者がまず行っておきたいこと
支援制度を利用する可能性がある場合には、復旧作業を進める一方で、次の資料をできるだけ残しておくことをおすすめします。
- 被害状況を写真・動画で記録する
- 被害を受けた設備・商品等の一覧を作成する
- 修理・復旧工事の見積書を保存する
- 地震前後の売上高が分かる資料を整理する
- 自治体へ事業用のり災証明書等について確認する
- 加入している損害保険等の対象になるか確認する
- 金融機関へ早めに資金繰りについて相談する
- 今後3~6か月程度の資金繰り表を作成する
片付け・修理を始める前に、必ず写真を残してください。
特に設備や商品を廃棄する場合には、廃棄する前の記録が、税務処理・保険金請求・補助金申請のいずれにおいても被害を証明する重要な資料となります。ただし、写真を撮るために危険な建物へ戻る必要はありません。安全の確保を最優先してください。
12.今後、新たな補助金等が設けられる可能性があります
2026年8月7日現在、中小企業向けの主な支援策として、災害復旧融資、災害貸付、信用保証制度、既存借入金の返済条件変更、小規模企業共済の災害時貸付、雇用関係の支援、税金の申告・納付に関する措置などが公表されています。
一方、今後の被害状況によっては、店舗・工場・機械設備等の復旧費用を対象とする「なりわい再建支援補助金」のような設備復旧支援、利子補給、熊本県独自の支援制度などが追加される可能性もあります。すでに介護サービス事業所・社会福祉施設等を対象とした災害復旧補助金は案内が始まっています。
なお、熊本県ホームページには過去の災害を対象とした「被災中小企業者再建支援補助金」等も掲載されています。制度名が似ていても、対象となる災害や申請期間が異なる場合がありますので、今回の令和8年熊本地震を対象とした制度であるかを必ず確認してください。
支援制度は今後随時更新される可能性がありますので、経済産業省、中小企業庁、熊本県、各市町村、日本政策金融公庫、国税庁等の最新情報をご確認ください。
よくあるご質問
FAQをまとめています。最新の情報は、各行政機関にお問合せ下さい。
Q1.本社が福岡県にありますが、熊本県内の支店が被災しました。支援制度の対象になりますか。
A.制度によって判定基準が異なるため、個別の確認が必要です。セーフティネット保証4号は原則として指定地域内に事業所を有することが要件となるため、熊本県内に実態のある事業所があれば対象となる可能性があります。一方、国税の期限延長の地域指定は「納税地」で判定されるため、本店所在地が福岡県内であれば自動延長の対象にはならず、個別に延長申請を行う必要があります。融資・保証は事業所ベース、国税は納税地ベース、と分けて整理してください。
Q2.自社に直接の被害はありませんが、熊本の取引先が被災して売上が減っています。使える制度はありますか。
A.日本政策金融公庫の災害関連融資では、直接被害を受けた事業者との取引に起因する売上減少や売掛金の固定化といった間接被害についても相談できる場合があります。一方、セーフティネット保証4号は原則として指定地域内に事業所を有することが要件となるため、「事業所はすべて福岡県内で、熊本には取引先があるだけ」という場合には、そのまま利用できるとは限りません。どの取引先がどのように被災し、自社にいくらの影響が生じているかを説明できる資料を準備したうえで、取引金融機関へご相談ください。
Q3.国税の申告・納付の期限はどうなりますか。
A.熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町に納税地のある方(法人を含む)は、地域指定により申告・納付等の期限が自動的に延長されます。これらの地域外に納税地がある場合は自動延長の対象になりませんが、災害その他やむを得ない理由により期限までに申告・納付ができないときは、所轄税務署長へ申請することで、その理由がやんだ日から2か月以内に限り延長が認められます。当初の期限を過ぎてしまった後でも、状況が落ち着き次第、申告等と同時に申請を行えば延長は認められます。
Q4.災害救助法の適用地域と、国税の期限延長の対象地域は同じですか。
A.異なります。災害救助法が適用されているのは熊本県内の10市10町1村(21市町村)ですが、国税の期限延長の地域指定は八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町の4市町です。中小企業向けの金融支援と税務上の措置では対象範囲が異なりますので、それぞれについてご確認ください。
Q5.り災証明書がまだ発行されません。融資の相談は証明書が出てからでないとできませんか。
A.いいえ、先に相談して差し支えありません。金融庁・財務局は金融機関に対し、り災証明書を求める手続きであっても、市町村における交付状況等を勘案して、現況の写真の提出など他の手段による被災状況の確認や、り災証明書の後日提出を認めるなど、被災者の便宜を考慮した取扱いとするよう要請しています。被災状況がわかる写真等を用意したうえで、まずご相談ください。
Q6.日本政策金融公庫の災害関連融資は、いくらまで借りられますか。
A.国民生活事業の「災害貸付」は3,000万円が各融資制度の融資限度額に上乗せされ、融資期間は一般貸付を適用した場合で10年以内(うち据置期間2年以内)です。中小企業事業の「災害復旧貸付」は1億5,000万円の別枠で、融資期間は運転資金が10年以内、設備資金が15年以内(いずれも据置期間2年以内)です。実際の融資額・条件は審査によりますので、各支店の特別相談窓口へお問い合わせください。
Q7.セーフティネット保証4号は、指定地域の官報告示を待たないと相談できませんか。
A.告示前でも相談できます。今回の地震に係る地域指定は「近日中に官報にて告示予定」とされていますが、告示に先行して信用保証協会での事前相談が開始されています。売上高等の減少については市区町村長の認定が必要となりますので、認定手続きとあわせて早めにご相談ください。
Q8.復旧のために設備投資を予定しています。税務上、事前に検討すべきことはありますか。
A.消費税の課税方式をご確認ください。災害により被害を受けた事業者については、簡易課税制度選択届出書・選択不適用届出書の提出に関する特例承認が設けられており、通常は事業年度開始前に必要な届出について、事後的な選択・変更が認められる余地があります。多額の設備投資を行う場合、原則課税を選択することで消費税の還付を受けられるケースがあります。判断を誤ると取り返しがつかないため、設備投資の実行前にご相談ください。
Q9.被災した設備の修理費用は、修繕費として処理できますか。
A.被災前の状態に戻すための費用は、原則として修繕費として取り扱われます。通常であれば資本的支出に該当するか判断が難しい工事であっても、災害復旧については特別な取扱いが認められる場合があります。適用にあたっては、工事前後の写真、見積書、工事内容が分かる資料、請求書、被害状況の記録などの保存が重要になります。
熊本地震の影響による資金繰り・税務についてお困りの事業者の方へ
熊本地震による影響は、建物・設備への直接的な被害だけではありません。
熊本の取引先の休業、売掛金の回収遅延、仕入れ停止、受注減少などにより、福岡の企業にも資金繰りへの影響が及ぶ可能性があります。
特に、今後数か月の売上や入金が減少する可能性がある場合には、実際に資金不足となってからではなく、早い段階で資金繰り表を作成し、金融機関への相談や税金の納付時期等を検討することが重要です。
当事務所では、中小企業・小規模事業者の資金繰り、金融機関対応、災害に伴う税務処理等についてご相談を承っております。
参考情報(一次情報リンク)
- 日本政策金融公庫「令和8年熊本地震に伴う災害に関する特別相談窓口」
- J-Net21「令和8年熊本地震に関する支援情報」
- 中小企業基盤整備機構「令和8年熊本地震に伴う災害に関する被災中小企業・小規模事業者対策について」
- 熊本県「令和8年熊本地震に関する支援制度・相談窓口」
- 厚生労働省「雇用・労働に関する特例措置や支援制度」
- 熊本労働局「令和8年熊本地震で被災された方へ(労働行政関係)」
- 税関「令和8年熊本地震の被害に対応した税関手続について」
- 九州財務局「令和8年熊本地震に係る災害等に対する金融上の措置について」
- 国税庁「令和8年熊本地震により被害を受けられた皆様へ(災害関連情報)」/「令和8年熊本地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」
- 経済産業省「令和8年熊本地震に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者支援措置を行います」
※ 本記事は2026年8月7日時点で公表されている情報をもとに作成しています。制度の対象地域、要件、融資条件、申請期限等は今後変更される可能性があります。また、激甚災害および特定非常災害の指定については、本記事作成時点では方針表明・指定見込みの段階です。実際に制度を利用する際には、各実施機関の最新情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断・法的助言ではありません。







