令和以降の節税保険の考え方
これまで、法人の節税保険の1つとして定期保険の積立機能のある商品が活用されていました。その保険は、長期平準定期保険や逓増定期保険などと呼ばれるものです。
それが令和元年7月8日以降の法人保険の契約において経理処理のルールが変更されました。
法人節税保険の新ルール
令和元年7月8日の税制改正の対象保険は、定期保険と医療保険などの第三分野保険です。
法人保険となるため契約形態が、契約者は法人で、被保険者は経営者または従業員、保険期間が3年以上となります。
経理処理は4種類に
経理処理の方法は保険のピーク時の解約返戻率によって4つに分けられます。
- 解約返戻率のピークが50%以下
- 解約返戻率のピークが50%超70%以下の場合
- 解約返戻率のピークが70%超85%以下の場合
- 解約返戻率のピークが85%超の場合
例として、保険期間20年、年間保険料500万円で経理処理をしてみます。
1.解約返戻率のピークが50%以下の場合
保険料の全額を損金算入できます。
例として、年間保険料500万円が損金算入となります。
2.解約返戻率のピークが50%超70%以下の場合
こちらは、年間保険料の額によって変わります。
まず年間保険料の額が30万円以下の場合は、保険料の全額が損金算入となります。
そして年間保険料の額が30万円超の場合は、以下のように3段階に分かれます。
保険期間の開始時:60%が損金、40%を資産として計上します。
保険期間の4割経過以降:全額が損金算入です。
保険期間の7.5割経過後以降:全額損金+資産として計上した40%の金額を取崩します。
例として、保険期間1年から8年までは、損金300万円、資産200万円です。
そして9年目以降は500万円が損金で、16年目以降は500万円+400万円が損金となります。
3.解約返戻率のピークが70%超85%以下の場合
保険期間の開始時:40%損金、60%を資産として計上します。
保険期間の4割経過以降:全額が損金です。
保険期間の7.5割経過後以降:全額損金+資産として計上した60%の金額を取崩します。
例として、保険期間1年から8年までは、損金200万円、資産300万円です。
そして9年目以降は500万円が損金で、16年目以降は500万円+600万円が損金となります。
4.解約返戻率のピークが85%超の場合
保険期間の開始時から10年:「支払保険料×ピーク時解約返戻率の90%」が資産です。
保険期間の11年目以降からピーク時:「支払保険料×ピーク時解約返戻率の70%」が資産となります。
ピーク時の解約返戻率以降:全額損金+ピーク時になるまでに資産として計上した金額を取崩します。
解約返戻率のピークは13年目に90%到達すると仮定して例を挙げます。
例として、1年から10年までは、損金95万円、資産405万円です。
11年から13年までは損金185万円、資産315万円、14年目以降は500万円+832.5万円が損金となります。
新しいルールで何が変わったのかといえば、解約返戻率に着眼し、計算方法が今までよりも細かくなりました。
また解約返戻率が高い保険ほど損金算入率が低く、解約返戻率が低い保険ほど損金算入率が高いため、法人の節税保険としての効果は低くなったといえます。
つまり節税を目的として法人保険に加入するとしたら解約返戻率が低いものの方が節税の効果があることになります。
既契約の保険は対象外
今までの経理処理のルールは、支払保険料に応じて変わりました。
まず解約返戻金がある長期平準定期保険や定期保険です。
保険料を支払っている間の経理処理は、その期間によって異なり、保険期間の前半60%の期間と後半40%の期間で経理処理が変わります。
前半の保険料には2つのお金が入っています。
1つ目が、万が一に備えた保険料で、これは経費として損金の扱いです。
2つ目が、将来の保険料を積立てておく保険料で、これは資産の扱いです。
後半の保険料は、前半分の資産としていたものを前払い分という扱いとなって、すべてが経費として損金の扱いとなります。
次に逓増定期保険です。
保険期間の前半60%の期間で、保険期間満了のときの被保険者の年齢によって経理処理が変わります。
被保険者の年齢が45歳を超えるものは、2分の1が損金で2分の1が資産となります。
被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、その保険に加入した時の被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が95を超えるものは、3分の1が損金で3分の2が資産です。
最後に被保険者の年齢が80歳を超え、かつ、その保険に加入した時の被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が120を超えるものは、4分の1が損金で4分の3が資産です。
そして保険期間の後半40%は他の定期保険と同様に全額損金の扱いとなります。
今までの経理処理は、令和元年7月8日前に加入しているものは改正後も適用されます。
ハーフタックスプランはそのまま
法人保険の中で従業員の福利厚生制度の一環として、養老保険の福利厚生プランという商品があります。
これは、契約者が法人、被保険者が経営者や従業員または従業員のみで、この場合の従業員は全員加入です。
死亡保険金受取人は被保険者の遺族、満期保険金受取人を法人とすることで、この福利厚生プランとなります。
この福利厚生プランは別名ハーフタックスプランとも呼ばれ、保険料の半分を損金、もう半分を資産として計上します。
これは税法上、従業員の福利厚生制度として活用されることを想定しているため、このような配分になっています。
このハーフタックスプランは、とくに変更はなく今までのままの経理処理となります。
まとめ
令和元年7月8日以降の法人保険契約の経理処理のルールそして既存の法人の節税保険にかかわる経理処理もお伝えしました。
結論としては、計算方法がより細かくなり、解約返戻率が高い場合には節税効果が低く、逆に解約返戻率が低い場合には節税効果が高くなりました。
とくに長期平準定期保険や逓増定期保険などが該当しますが、その他医療保険などの第三分野の保険も対象となります。
個別具体的で詳しい税務に関しては税理士に相談されることをおすすめしますが、ここでは税理士に相談する前に知っておいていただきたい令和元年の税制改正に伴う法人節税保険の考え方についてお伝えしました。
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