中小企業が災害にあった場合の対応策とは

福岡の税理士からの情報提供

平成28年に熊本地震、平成29年には福岡、大分、熊本にまたがる九州北部豪雨がありましたが、今年も近畿圏などを直撃した台風21号、きょう未明におこった北海道地震などもあり、自然災害で被災するリスクが高まっていると感じます。

 

今後も、気候変動による大雨、集中豪雨(ゲリラ豪雨)、台風、暴風などで大きな損害が出たり、思いもよらぬ時期、場所で、被害が及ぶ事も考えられます。

 

また、万が一災害の被害に遭ったら、自分自身や家族の命を守る一方で、企業としてどのように対処すればよいか考えて行動しなければならず、経営者の皆様は困惑してしまうかもしれません。

 

中小企業経営者や個人事業主の方が災害の被害を受けた場合、当然ですが、事業に対する備えもしっかりと行っておくことが求められます。当記事では、中小企業や個人事業主に対する災害支援策についてどのようになっているか確認したいと思います。

 

災害が起こった時の中小企業への救済法

災害救助法では、被災状況が「著しく困難でかつ多数の世帯の住居が滅失した状態」の場合に県が適用します。それにより自衛隊や日本赤十字などにに応急的な救助の要請等を行い、被災者の救助や保護の活動をすることになっています。

中小企業向けには、

  1. 特別相談窓口設置
    政府系金融機関、商工会議所、商工会連合会等に設置されます。
  2. 災害復旧貸付
    日本政策金融公庫や商工組合中央金庫が運転資金、設備資金を融資する災害復旧貸付が行われます。
  3. セーフティネット保証4号実施
    災害の影響により売上高等が減少している中小企業・小規模事業者を対象に、信用保証協会が一般保証とは別枠で融資額の 100%を保証するセーフティネット保証 4 号を実施されます。
  4. 既往債務の返済条件緩和
    返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化、担保徴求の弾力化などについて、政府系金融機関等に対して柔軟に対応するよう国が要請します。
  5. 小規模企業共済災害時貸付
    節税で知られる小規模共済ですが、災害時には、運営する中小機構が原則として即日で低利で融資を行う災害時貸付がなされます。

さらに激甚災害法に基づき指定されると上記支援策の他に、災害関係保証(特例)の実施や日本政策金融公庫による災害復旧貸付の金利引下げが行われます。

 

九州北部豪雨の時の対応とは?

平成29年九州北部豪雨の時には、上記の措置に加えて、補助金面での支援や融資保障の適用拡大の措置が講じられました。

 

小規模事業者の販路開拓の経費を助成する「小規模事業者持続化補助金」や「商店街補助金」において特別な支援も実施されています。また、セーフティネット保証4号の指定地域拡大などの措置も講じられています。

 

損害保険と小規模共済の活用も

平成28年度の台風10号、平成29年度の九州北部豪雨の被災事業者への調査によると、「各種災害と保険対象の補償を組み合わせた総合保険」や「休業補償」にかかる商品を活用して損害をカバーしたケースもあったと報告されています。

福岡災害対策

(参照出典:経済産業省「中小企業の災害対応の強化に関する研究会中間報告書」平成30年3月29日)

 

保険商品の多様化などで、事業者向けの細かいニーズに応える事が可能になっていますが、保険活用のためには事業者も保険商品の理解と十分な検討時間を確保することが必要です。

 

事業継続計画の策定

地震や豪雨など事業に影響を及ぶす災害が発生した場合、事業活動を安定して継続するための計画策定(事業継続計画:Business Continuity Plan )をしておくことも重要です。また、合せて取引先や従業員への緊急時の連絡体制の整備も必要です。

 

ただし、平成28年3月時点では中小企業のBCPの策定率は約15%にとどまっているとのこと。未策定の事業者においては早急な検討が求められています。