事業承継の方法論

福岡の事業承継

事業承継ガイドラインの公表

中小企業庁では、平成28年12月に「事業承継ガイドライン」を公表しました。日本全国、そして福岡県や九州各県においても、多くの中小企業で後継者へ事業を承継する時期に差し掛かっています。

今回公表された事業承継ガイドラインは、平成18年に事業承継協議会によって公表された内容がおよそ十年ぶりに改正され、福岡や九州の多くの事業会社においても参考になることかと思われます。

今回の「事業承継ガイドライン」の主な内容としては、次の3つの構成となっています。

  1. 事業承継に向けた早期・計画的な取組の重要性
  2. 事業承継に向けた5ステップ
  3. 地域における事業承継を支援する体制の強化

上記のうち、2.の事業承継に向けた5ステップにおいては、早期かつ計画的な事業承継を図るため、事業承継の十尾において5つの段階に分類したステップが記載されています。

事業承継の5つのステップ

ステップ1:必要性の認識

はじめに、第1段階のステップでは、事業承継に向けた準備の必要性を認識することが求められます。事業承継に向けた早期・計画的な準備着手を事業承継を行う経営者に求めています。このとき、何から手を付けてよいかわからないことが多いかと思いますが、まずは身近な税理士に相談してみてもよいでしょう。または事業承継等のセミナーに参加してみるのも良いかもしれません。

ステップ2:経営課題等の把握

続いて、第2段階のステップは、経営課題等の把握する行程です。税理士会等で公表されている「中小企業の会計に関する指針」など会社の経営状況を見える化するための手法を活用しつつ、会社の現状を正確に把握することを通じて、事業承継に関する課題を透明化していきます。

過去の業績推移や事業資産等の洗い出しをしていると、スムーズに経営課題等も見えてきます。事業資産については、人材、モノ、カネのみならず、信用、取引際等の見えない資産も検討しておくことが重要です。

ステップ3:磨き上げ

第3段階のステップは、事業承継に向けた磨き上げになります。現経営者が本業の競争力強化等の経営改善を行なうことで、後継者が後を継ぎたくなるような経営状態への引上げを図っていきます。

ステップ4:後継者への承継計画

親族内・従業員承継が選択されるケースにおいては、第4段階のステップが入り、事業承継計画策定に基づき、自社株等の事業用資産や代表権の承継時期を記載した事業承継計画を後継者とともに策定し事業承継の円滑化を図ります。後継者の方も、セミナーや書籍等を通じて事前に予備知識をつけておくことも必要でしょう。

ステップ5:事業承継実施

最後に第5段階のステップとして事業承継の実施になります。なお、社外への事業承継を選択するケースにおいては、第4段階のステップとして事業承継先のマッチングを通じて、第5段階のステップとしてM&Aなどを実施していきます。

このような5つのステップを経て、事業の見直し等を行うことが求められます。

 

具体的な事業承継方法

スムーズな事業承継を行うには、各企業においてどのような取組みが求められるのでしょうか。上述のとおり、中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、事業承継に向けた5つのステップの第1歩として事業承継に向けた準備の必要性が掲げられています。

また、事業承継のサポーターとして士業専門家が位置づけられます。士業専門家とは、税理士、弁護士、公認会計士などがあげられます。

このうち、税理士は、企業との税理士顧問契約を通じて日常的に経営者との関わりが深く、決算・申告支援等を通じ経営や企業内情にも深く関与しています。

次に、弁護士は、経営者の法律の代理人として、法的な観点から事業承継を進めるにあたり、経営者と共に利害関係者への説明・説得を行い、円滑な事業承継を進める役割を担っています。

公認会計士は、会計・監査の専門家として事業承継の様々な場面で、広い見識に基づく支援が期待されています。公認会計士の中には税理士資格も保有しているものもおりますので、税務支援や税務相談を行うことも可能です。公認会計士というと、大きな上場企業の監査を担当するイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、中小企業支援を担当する公認会計士も存在します。

 

その他の士業として、中小企業診断士もおりますが、中小企業の様々な経営課題、事業承継支援への対応や企業診断等に取り組んでいます。

これらの専門家とともに、事業承継を進めていくのも一案です。続いて事業承継に向けた計画的な作業着手を経営者に促すためのツールとして事業承継ガイドラインでも掲載されている事業承継診断についてみていきたいと思います。

事業承継診断とは

事業承継診断とは、事業承継に関する簡単な診断項目への回答することで、事業承継を行う会社の将来像、具体的な事業承継の進め方、方針、経営課題等について経営者自らが検討するきっかけをつくるための取組みです。

事業承継ガイドラインでは、下記のとおり定義しています。

事業承継に関する診断項目への回答を通じて、自社の将来や事業承継に向けた進め方・課題について経営者自ら検討するきっかけとする取組であり、事業承継に向けた早期かつ計画的な準備への着手を促すものである (出典「事業承継ガイドラインP21 脚注」より引用)

 

事業承継診断は、例えば、顧問税理士との相談など、事業承継をサポートする支援者との接触の中で、税理士等が経営者の事業承継に関する課題、ニーズなどを拾い上げていきます。事業承継診断においては、できる限り簡単で短い時間で実施できる方法をとることが望まれます。また、事業承継診断の実施においては、弁護士、税理士等の中小企業や専門分野が異なる様々な支援者が情報を共有しながら進めていくことも重要です。

税理士によるサポート

事業承継ガイドラインにおいて、事業承継のサポート機関として税理士が挙げられています。税理士は、顧問契約を通じて、中小企業の事業承継に大きく寄与することができます。一度税理士に相談してみてみることも一案です。

 

参照元:経済産業省

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317004/20220317004.html