日本税理士連合会建議書の概要を税理士が解説
日本税理士会連合会では、「平成31年度税制改正に向けた建議書」を、財務省、国税庁などの各省庁に提出しました。日本税理士会連合会とは、全国の税理士7万8千人が加盟し、全国15の税理士会で構成される、税理士の業界団体と言える組織になります。
今回は、その税の専門家である税理士側が来年度の税制改正に対して国にどのような要望(建議)を出しているのかをかいつまんで見てみいきたいと思います。
税理士側の建議内容とは?
上記の税理士連合会の建議書の中身ですが、重要項目として「消費税の単一税率」、「所得税の各種控除のあり方」、「固定資産税制度の見直し」などを挙げています。
中小企業や個人事業主にとって関係の深い内容としては、経営者のモチベーションを高めるための業績連動給与の導入、中小企業投資促進税制や研究開発税制のあり方などが記載されています。
その他、いわゆる「億り人」やコインチェック問題等のニュースで話題となった仮想通貨の税制やよく問題として議論になる個人事業主による法人成りに関するトピックも含まれています。
消費税の単一税率とは
消費税が8%から10%に引き上げられる平成31年10月1日から軽減税率制度が導入されます。
消費税の軽減税率とは、一定の飲食料や新聞については8%の税率が適用というものですが、事業者側としては複数の消費税率に対して区分経理することが求められます。
(出典:国税庁「平成31年10月1日から消費税の軽減税率制度が実施されます」)
この消費税の軽減税率制度について、日本税理士会連合会では、事業者の事務負担が増加する点や逆進性対策として非効率である点などを理由として、単一税率制度を強く主張しています。
事務負担の増加については、すでに巷で騒がれているのでご存知かと思いますが、「店内で飲食すると消費税10%とられるのに、同じものをテイクアウトすると8%になる」といったことへのお店の対応などが含まれます。
また逆進性とは、簡単に言うと、例えば消費税率が上がると、低所得者層にとっては収入に占める生活必需品の割合が高いため、収入に占める税の負担率が高所得者層と比べて高くなるということです。
この消費税の逆進性への対策として、税理士会連合会としては、一定額を入金したプリペイドカードを配布する方法など、斬新な提案もしています。いよいよ来年に迫っている消費税の10%への引き上げですが、残される課題も注視しておきたいですね。
給与所得控除の見直しを主張
31年度の税制改正に向けて日本税理士会連合会では、重要建議項目として、上記の消費税の軽減税率に加え、基礎控除や配偶者控除などの基礎的な人的控除の見直しも主張しています。
給与所得控除や基礎控除については29年度、30年度の税制改正でも見直しがされていますが、税理士側として、いまだ不十分としてさらなる改革を提案しています。
特に公的年金等控除に対して、所得税上、支払いをする際に社会保険料控除を受けられた上、年金給付を受ける際には公的年金等控除も適用されるため、「実質的に非課税」と主張し、「可能な限り縮減」をすべきとしています。
さらに、役員やサラリーマンなどの給与所得から控除されるている給与所得控除についても、控除水準の見直しを主張。給与所得控除と上記の公的年金等控除の一部を基礎控除に振り替えることも提案しています。給与所得者にとっては耳の痛い話かもしれません。
中小法人税制の見直し
中小企業向けの税制については、中小企業経営者のモチベーションを高めるため、中小企業に業績連動給与を導入することを建議しています。
役員報酬や役員賞与の取り扱いについては様々な議論のあるところですが、税理士側としては、株主総会等の決議によって事前に確定するなどの諸前提のもと、原則損金算入とすべきとしています。
その他、中小企業投資促進税制や研究開発税制に関する要件の見直し、同族会社の留保金課税制度についても言及しています。
以上、税理士の集まりである税理士会連合会についての税制改正建議書に触れてみました。いかがでしたか。興味のある方は、下記のリンクから公表されている資料が閲覧できますので是非覗いてみてください。
出典:日本税理士連合会公式ウェブサイト「税制改正に関する建議書」より